【RCT】小児の上気道炎による発熱に対するプロバイオティクスの効果

"Probiotics and Fever Duration in Children With Upper Respiratory Tract Infections"
"小児上気道感染症におけるプロバイオティクスと発熱期間"
JAMA Network Open. 2025;8(3):e250669.
Silvia Bettocchi S, Anna Comotti, Marina Elli, et al.
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■この論文を端的に言うと

イタリアで市販されているプロバイオティクスを投与することにより、小児の上気道感染症における発熱期間が中央値で5日から3日へと約2日短縮され、統計学的にも有意差を認め、安全性にも大きな問題は認められなかった。

■この論文の要約

―はじめに―
 上気道感染症(URTI)は小児において非常に頻度の高い疾患であり、年間5~8回罹患するとされ、発熱は患児本人のみならず家族にも大きな負担となる症状のひとつである。医療者にとっても、抗菌薬の過剰使用・不適切使用につながる。解熱薬は一時的な体温低下には寄与するものの、発熱期間そのものを短縮する効果は乏しく、抗菌薬も一部の症例を除き有効ではない。
 ここ数十年間、プロバイオティクスは感染症管理の新たなアプローチとして注目されている。これらのサプリメントの主な用途は、胃腸症状の緩和であるが、腸内細菌叢、炎症・免疫反応の相互作用から、プロバイオティクスが腸管以外の感染症においても役割を果たす可能性が示唆されているが、小児URTIに対する治療効果に関するエビデンスは限定的であった。

―方法―
 本研究はイタリアの小児救急外来において実施された三重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験であり、日齢28から4歳までの発熱(直腸温38.5℃以上)を伴うURTI児128例を対象とした。
(除外基準:下痢のある患者、過去2週間以内にプロバイオティクスの内服歴がある患者、慢性自己免疫疾患を有する患者、免疫抑制薬による治療中の患者、入院が必要な患者)

 保護者には、解熱(*解熱剤を使用せずに直腸体温が38.5℃未満の状態が少なくとも24時間持続)するまで、1日少なくとも3回直腸温を測定するよう徹底して指導した。追跡調査として、登録から約7日後に研究者が電話連絡を行い、サプリメントの服用遵守状況、発熱期間、帰宅後の受診における抗菌薬の処方、および副作用について確認または質問を行った。発熱が持続している場合は、7日ごとに追跡電話を行った。安全性および忍容性は、報告された有害事象に基づいて評価された。

 対象はコンピュータ生成乱数によりプロバイオティクス群とプラセボ群に割り付けられ、プロバイオティクス群にはBifidobacterium breve M-16V、Bifidobacterium lactis HN019、Lactobacillus rhamnosus HN001を含む製剤が14日間投与された。

 主要評価項目は発熱期間(日数)とされ、副次評価項目として抗菌薬使用や下痢、有害事象などが評価された。

 解析はintention-to-treat解析を基本として行われた。

―結果―

 ITT解析において発熱期間の中央値はプロバイオティクス群で3日(IQR 2–4日)、プラセボ群で5日(IQR 4–6日)と有意に短縮しており(P<0.001)、Poisson回帰分析でもRR 0.64(95%CI 0.51–0.80)と有意差が確認された。

 この結果はper-protocol解析でも同様であった。

 抗菌薬使用率や抗菌薬関連下痢については両群間に有意差は認められず、有害事象としては便秘や腹痛など軽微なものが報告されたが、両群間で頻度に差はなかった。

―考察―

 本研究は、小児URTIに対するプロバイオティクスの治療効果、特に発熱期間短縮という臨床的に重要なアウトカムに対する有効性を示した点で意義が大きい。

 これまでの研究は予防効果に関するものが多く結果も一貫していなかったが、本研究は発熱を伴うURTIに限定して評価した点が特徴であり、より臨床現場に即した結果といえる。

 作用機序としては、免疫応答の調整や炎症性サイトカインの制御、さらには抗ウイルス作用などが想定されている。


 一方で、感染原因の詳細な同定がなされていない点や単施設研究である点、さらに脱落率が高い点などは解釈において注意を要する。

―結論―

 本研究は、特定のプロバイオティクス混合製剤が小児URTIにおける発熱期間を有意に短縮しうる可能性を示しており、安全性にも大きな懸念は認められなかった。今後は対象患者や菌株ごとの効果をより明確にした研究の蓄積が期待される。

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■所感
 一般的に通常感冒に対する特効薬は無く、基本的には対症療法で、個々の症状に対して去痰薬や解熱剤、ハチミツやヴェポラップなどが有効かも、と言うくらいな現状ですが、一般小児科外来のほとんどはこの"風邪"が相手になります。

 本研究で示された"発熱期間の約2日間の短縮"という結果は、小児診療において非常にインパクトが大きく、抗インフルエンザ薬でも約1日短縮とされることを踏まえると、その効果量は際立っていると感じます。

 一方で、診断や抗菌薬投与が担当医の裁量に依存していること、細菌・ウイルスの区別がなされていないこと、介入開始時期が統一されていないこと、内服遵守のばらつきや脱落率の高さが気になるところではあります。
 解熱の定義も日本で一般的に用いられる腋窩温37.5度未満の維持とは違い、比較的緩やかではあります。
 さらに本研究で用いられた菌株は日本では一般的に市販されているものではないようなので、本邦においてすぐに適用できるものではなさそうです。

 以上を踏まえると、本結果はすぐさま「特効薬」とは言い難いものの、通常感冒に対する新たな治療選択肢としてプロバイオティクスが位置付けられる可能性を示唆する、小児科医としてはかなりインパクトの大きい研究であり、今後の再現性の検証や他の菌種での効果にも期待したいところです。

 興味のある方はぜひ元論文も参照してみてください。

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 *記載内容に関してはあくまでも個人の解釈、意見の範疇ですので参考程度に捉えてください。

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