【Cochrane】風邪の時のハチミツ内服の有効性

"Honey for acute cough in children"
"小児における急性咳嗽に対するハチミツ"
 Cochrane Review. 
2018, Issue 4.Oduwole O, Udoh EE, Oyo-Ita A, Meremikwu MM.

以下、文献へのリンクです。
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今回は文量が多いので、要約のみになります。

Backgraound
 咳は保護者の心配の種であり、外来受診の主な原因となっている。咳は、児とその保護者のQOLや睡眠に影響を与え、不安を与える可能性がある。ハチミツは、咳の症状を緩和するために使用されてきた。本Reviewでは小児の急性咳嗽に対する外来治療でのハチミツの有効性を評価することを目的とした。

Search Methods
 CENTRAL(2018年第2号)、MEDLINE (以下すべて2014年~2018年2月8日)、Embase、CINAHL、EBSCO、Web of Science、LILACSを検索した。また、2018年2月12日にClinicalTrials.govとWorld Health Organization International Clinical Trial Registry Platform (WHO ICTRP)を検索した。
 2014年のレビューでは、AMEDとCAB Abstractsの検索を行ったが、今回のアップデートでは、機関へのアクセスができず、これらの検索は行わなかった。

Selection criteria
 生後12ヶ月から18歳の小児を対象に、外来管理下で、急性咳嗽に対して、ハチミツ単独または抗生物質との併用と、無治療プラセボハチミツベースの咳止めシロップその他の市販の咳止め薬を比較した無作為化比較試験を対象とした。

Data collection and analysis
 Cochraneによる標準的な方法論的手順を用いた。

Main results
 899人の小児を含む6つの無作為化対照試験を対象とし、今回のアップデートで3つの試験(331人)を追加した。

 2つの研究は実行バイアスと検出バイアスのリスクが高く、3つの研究は減少バイアスのリスクが不明確と評価した。3つの研究は、他のバイアスのリスクが不明確であった。
 研究では、ハチミツとデキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン、サルブタモール、ブロメリン(パイナップル由来の酵素)、無治療、プラセボを比較した。
  5つの研究では、咳の症状緩和の測定に7段階のリッカート尺度が使用され、1つは不明瞭な5段階尺度が使用されていた。すべての試験で、スコアが低いほど咳の症状が緩和されていることを示した。

 7段階のリッカート尺度によると、ハチミツはおそらく無治療またはプラセボよりも咳の回数を減らしデキストロメトルファンと同様に、咳の頻度を減らす効果があり、咳の頻度を減らす上で、ジフェンヒドラミンよりも優れている可能性がある。

 ハチミツを3日間まで与えることは、プラセボやサルブタモールと比較して、咳の症状を和らげるのに効果的であると思われる。3日を超えると、咳の重症度、不愉快な咳、および保護者と児の睡眠への咳の影響において、ハチミツはサルブタモールやプラセボと比して有効性があるわけでは無さそうである。
 5段階の咳スケールでは、咳の頻度と重症度を軽減する上で、ハチミツとハチミツに混ぜたブロメリンの効果にほとんど差がなかったと思われる。

 有害事象としては、神経過敏、不眠、多動などがあり、ハチミツ投与群では7名(9.3%)、デキストロメトルファン投与群では2名(2.7%)で認められた。
 ジフェンヒドラミン群では3名(7.5%)が傾眠を訴えた。
 ハチミツとプラセボを比較では、ハチミツ群34名(12%)、プラセボ群13名(11%)が消化器症状を訴えた。
 サルブタモールを投与された4人の小児に発疹が見られたのに対し、蜂蜜投与群では1人であった。
 無治療群では有害事象は報告されなかった。

=以下、概要を大まかにまとめた表です=

Authors' Conclusions
 ハチミツは、無治療、ジフェンヒドラミン、プラセボよりも咳を緩和すると思われるが、デキストロメトルファンと比較すると、ほとんど差がない可能性がある。
 ハチミツは、プラセボやサルブタモールよりも咳の持続時間を短くすると思われる。
 ハチミツの使用を肯定もしくは否定する強い根拠はなかった
 ほとんどの児は1日だけハチミツを摂取しており、このレビューの結果には限界がある。
 有害事象の発生率は、ハチミツ群と対照群との間で差がなかった。

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以下、所感です。 

 通常感冒に対してよく使用される薬剤として、抗ヒスタミン薬や鎮咳薬、去痰薬、気管支拡張薬、ロイコトリエン拮抗薬などがあるかと思いますが、有効であるデータがある薬剤は去痰薬くらいで、むしろ有害であるとされる薬剤も多いです。特に鎮咳薬は市販の感冒薬にも配合されていることが多いですが、濫用は百害あって一利なしだと思いますので、もう少し慎重に対象を絞るべきです。
 今回のReviewでは、感冒時に咳嗽に関連して困る種々の症状を評価項目として、ハチミツがこれらの薬剤に対して軒並み有効性を示したものになります。最終的な著者らの結論としては肯定も否定もできるような強い根拠は無し、とのことですが、少なくとも各薬剤に対して劣っているわけでは無そうですし、副作用のことなども考えると薬剤以外の選択肢があると良いですよね。薬と違って子どもも抵抗感なく摂取できるので便利です。
 1歳未満児のハチミツ摂取はボツリヌス症発症リスクがあるので、必ず1歳以上を対象としてください。

 その他の薬剤に関しても、CochraneでまとまったReviewがある薬剤も多いので、ぜひ目を通してみてください。

 *記載内容に関してはあくまでも個人の解釈、意見の範疇ですので参考程度に捉えてください。

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