【後ろ向きコホート】第一世代抗ヒスタミン薬とけいれんとの関連

"First-Generation Antihistamines and Seizures in Young Children"
"乳幼児における第一世代抗ヒスタミン薬とけいれんとの関連"
JAMA Netw Open. 2024;7(8):e2429654.
Kim JH, et al.

以下、文献へのリンクです
First-Generation Antihistamines and Seizures in Young Children | Neurology | JAMA Network Open | JAMA Network
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■この論文の要約


―はじめに―
 小児診療でも日常的に使用される抗ヒスタミン薬だが、第一世代抗ヒスタミン薬は血液脳関門(BBB)を通過し、中枢神経系(CNS)に作用することが知られている。もともとは鎮静薬や抗精神病薬としての側面を持ち、現在でも感冒に伴う鼻汁や掻痒に対して広く処方されている。

 一方で、これらの薬剤は眠気だけでなく脳波活動や神経興奮性にも影響を与え、けいれん閾値を低下させる可能性が示唆されている。成人や動物実験ではその関連が報告されているものの、実臨床における小児、とくに乳幼児での影響については十分なデータが無かった。

 本研究は、「第一世代抗ヒスタミン薬の処方が、小児のけいれん発症リスクを増加させるのではないか」という仮説のもとに実施された。

―方法―
 韓国のNational Health Insurance Service(NHIS)データベースを用いた後ろ向きコホート研究であり、2002〜2005年出生の小児を2019年までをICD-10による主診断と処方コードをもとに追跡。

 研究デザインとしてはcase-crossover designが採用されており、各患者自身を対照とすることで時間不変の交絡因子を除外する設計となっている。

 抗ヒスタミン薬の処方期間の95パーセンタイルが13~18日であったため、
けいれん発症日をindex dateとし、その前
 "1〜15日:hazard period"
 "31〜45日、61〜75日:control period1, 2"(これらの対照期間は発作とは無関係であると想定)
として比較した。

 対象は、けいれんで救急受診した小児のうち、抗ヒスタミン薬が少なくとも1日以上処方されていた症例で、最終的に11,729例が解析対象となった(Fig.1)。

 共変量として、参加者は、基準日時点で3つの年齢層(生後6~24か月、25か月~6
歳、7歳以上)と、出生地域(ソウル、大都市圏、都市部、農村部の4つに分類)、経済状況(保険給付額に基づいて推定)、臨床状態(生後6ヶ月未満での集中治療室(ICU)への入院歴)、周産期の状態(ICD-10コードによる)を設定。
 発作の発生と関連する可能性のある臨床状態を調整するため、リスク期間および対照期間中に最も頻度の高い気管支炎などの9つの併存疾患を、参加者ごとに時間依存共変量として定義した。
 サブグループ解析は、指標日時点の年齢層、性別、出生地域、経済状況、出生年、指標日の季節、周産期状況を含む参加者の特性を層別化して実施した。

―結果―

 解析対象11,729例のうち、hazard periodまたはcontrol periodのいずれかで抗ヒスタミン薬が処方されていたdiscordant症例は3,178例(27.1%)であった。

 背景(Tab.1):年齢分布は、6〜24か月が985例(31.0%)、25か月〜6歳が1,445例(45.5%)、7歳以上が748例(23.5%)であり、男児が1,776例(55.9%)とやや多かった。社会経済的には中間層が57.5%を占め、周産期関連疾患を有する症例は29.9%であった。

 抗ヒスタミン薬処方とけいれん発症の関連についての検討では、index date前1〜15日のhazard periodにおける処方は1,476例(46.4%)であり、control period 1(31〜45日前)の1,239例(39.0%)、control period 2(61〜75日前)の1,278例(40.2%)と比較してより多く認められた。

 この結果、第一世代抗ヒスタミン薬の処方は、けいれん発症リスクの有意な上昇と関連しており、adjusted odds ratio(AOR)は1.22(95% CI 1.13–1.31)であった。

 さらに、直前期間に新規に抗ヒスタミン薬が処方された症例においても同様にリスク上昇が認められ、AORは1.25(95% CI 1.14–1.35)であった。


 感度解析として曝露期間を短縮した解析では、1〜10日ではAOR 1.25(95% CI 1.15–1.36)、1〜5日ではAOR 1.36(95% CI 1.23–1.51)と、曝露期間が短いほど関連が強くなる傾向が認められた。

 また、急性上気道炎などの併存疾患を時間依存性共変量として調整した解析においても、1〜15日でAOR 1.10(95% CI 1.01–1.20)、1〜10日でAOR 1.13(95% CI 1.03–1.25)、1〜5日でAOR 1.21(95% CI 1.08–1.36)と、有意なリスク上昇は維持されていた。

 さらに、配合剤を除外し、単剤の第一世代抗ヒスタミン薬に限定した解析においても、15日・10日・5日のいずれの解析でも同様の結果が得られており、本結果の一貫性が確認された。

 サブグループ解析では、年齢による交互作用が認められ(P = 0.04)、6〜24か月において最も強い関連が認められた(AOR 1.49[95% CI 1.31–1.70])。一方、25か月〜6歳ではAOR 1.11(95% CI 1.00–1.24)、7歳以上ではAOR 1.10(95% CI 0.94–1.28)と、年齢が上がるにつれて関連は減弱していた。


―考察―

 本研究は、第一世代抗ヒスタミン薬の使用が小児におけるけいれん発症と関連することを、大規模データを用いて示した。特に乳幼児においてリスクが高いという結果は、発達段階を踏まえた薬剤選択の重要性を示唆する。

 その機序としては、複数の機序が関与している可能性がある。

 まず、乳幼児では血液脳関門が未熟であり、薬剤の中枢移行性が高い。さらに、薬物代謝・排泄機能の未熟性により、薬剤の作用が増強・遷延する可能性がある。また、神経発達過程におけるミエリン化の未完成や神経回路の未熟性も、けいれん感受性の高さに関与すると考えられる。

 加えて、ヒスタミンは中枢神経系において抗けいれん的な役割を持つとされており、H1受容体遮断によりこの作用が抑制されることで神経興奮性が増加する可能性も指摘されている。

 一方で、本研究は保険データベースを用いた解析であり、実際の服薬状況の確認ができない点や、けいれんの詳細な臨床情報が得られない点などの限界も存在する。また、OTC薬の使用は把握できておらず、曝露評価に影響を与えている可能性も否定できない。


―結論―

 第一世代抗ヒスタミン薬の処方は、小児におけるけいれん発症リスクの増加と関連しており、特に6〜24か月の乳幼児でその影響が顕著であった。日常診療で頻用される薬剤であるが、その中枢神経系への影響を踏まえ、特に乳幼児においては適応を慎重に判断する必要があると考えられる。


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■所感

 感冒に対して「鼻汁が出ているから、とりあえず抗ヒスタミン薬」という処方は、いまだ見られます。
 第一世代抗ヒスタミン薬が、発熱を有する乳幼児に対し処方されているケースも少なくなってきたとはいえ見受けられますが、基本的には通常感冒に対する抗ヒスタミン薬の効果は限定的です。(→ cf. 【Cochrane】風邪の時のハチミツ内服の有効性)

 熱性けいれんガイドラインでは、第一世代抗ヒスタミン薬により、けいれん発症時のけいれん持続時間が延長する可能性について言及されていますが、発症頻度については明記されていませんでした。

 本報告は熱性けいれんに限った研究ではありませんが、特に6~24カ月の乳幼児において、第一世代抗ヒスタミン薬内服中のけいれん発症リスクが約1.5倍に増加するというものでした。
 熱性けいれん児が搬送された際におくすり手帳を確認すると第一世代抗ヒスタミン薬が処方されているケースも多いように感じていたので、肌感としても違和感のない結果のように思います。

 後方視研究ではありますが、各国から同様の報告がエビデンスとして積み上がれば、近い将来ガイドラインなどに明記されるようになるのではないでしょうか。
 
 抗ヒスタミン薬は私もアレルギー診療において頻用しており非常に有用な薬剤である一方で、特に乳幼児においてはその適応を慎重に判断する必要があります。日常診療の中で「本当に必要な処方か」を十分に考えることが重要ではないでしょうか。

 興味のある方はぜひ元論文も参照してみてください。

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 *記載内容に関してはあくまでも個人の解釈、意見の範疇ですので参考程度に捉えてください。

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